零細事業者のための事業再生手続~中小企業再生支援協議会~

既にご紹介しましたが,個人事業主の事業再生については,小規模個人再生が可能であり,コスト面を考えても,非常に優秀な手続といえます。

法人成りをしていない,飲食店,小売店などは,資金ショートする前に,この手続きによって債務を圧縮し,経営改善を行うことで事業継続も可能と言えます。

 

他方,法人については,事業再生手続が複数ありますが,その中でも,準則型私的整理手続としての中小企業再生支援協議会を利用した再生手続が最も安価です。

今回,協議会の活動状況に関する資料に接することがありましたので,協議会のご紹介も兼ねて,活動状況について見ていきたいと思います。

なお,数値データは,令和元年7月から9月までの活動状況を示したものになります。

 

1 中小企業再生支援協議会とは?

 中小企業再生支援協議会は,中小企業の事業再生を支援するために,各都道府県に設置されています。商工会議所に設置されていることが多いです。

 協議会には,企業再生に関する知識と経験を持つ専門家が常駐しており,中小企業の再生に係る相談などに対応し,再生支援をしています。

 利用の流れとしては,窓口相談(1次対応)と再生計画策定支援(2次対応)の2段階に分かれます。

 窓口相談において,常駐の専門家がヒヤリングにより現在の経営状況を把握した後,経営上の問題点や課題の抽出を行った上,再生計画の作成が必要と判断された場合には,再生計画策定支援に移行します。再生の可能性が低いと判断された場合などは,窓口相談で終了となります。

 再生計画策定支援に移行すると,常駐の専門家が中心となって,必要に応じて外部専門家を加えて個別支援チームを編成し,再生計画策定を支援し,金融債権者との合意締結までサポートしてくれます。

 協議会を利用した事業再生は,金融債権者のみを対象としたもので,取引先は対象としませんので,信用不安が広がる可能性は低いと言えます。

 デメリットとしては,民事再生手続と異なり,再生計画に対する全金融債権者の同意が必要である点が挙げられます。

 ただ,協議会を利用した事業再生手続は金融機関に概ね浸透しているため,抵抗感が少なく,金融機関からの信頼も厚いと言えます。また,協議会の構成メンバーには,地銀のOBが含まれているので,合意を形成する力は十分にあると言えます。

 

2 活動状況について(令和元年7月から9月までの全国の協議会の活動状況)

① 窓口相談の件数

 製造業が27.1%(161件)と最多で,次いで,卸売・小売業が23.4%(139件)となっています。

 その他は,飲食業・宿泊業が10.8%(64件),建設業が10.4%(62件),運輸業が4.9%(29件),サービス業その他が23.4%(139件)です。

 

② 再生計画策定完了案件の件数

 窓口相談の後,再生計画策定支援に移行し,再生計画策定が完了した件数になります。

 窓口相談の件数と比例して,製造業が34.5%(70件)と最多で,次いで,卸売・小売業が24.6%(50件)となっています。

 金融支援の手法については,リスケが79.3%と最多で,次いで,債権放棄の実施が18.7%となっています。

 なお,債権放棄については,直接放棄はほぼなく,第二会社方式を利用した債権放棄が9割以上を占めています。

 

 ここまでは,ある程度予想の範囲内でしたが,意外だったのは,次の2つのデータです。

 

 まず,売上高別割合です。売上高1億円超5億円以下の企業が48.3%(98件)と最多ですが,1億円以下の企業が15.8%(32件)もありました。

 また,従業員別割合についても,従業員数が21名から100名の企業が42.9%(87件)と最多ですが,10名以下の企業も25.1%(51件)ありました。

 つまり,売上高1億円以下,従業員10名以下の規模の企業でも利用実績があり,しかも,それが全体の2割ほどを占めているということです。

 より細かいデータを見ると,売上高6300万円,従業員4名の製造業で,債権放棄による再生計画を策定している案件もあります。

 これは結構意外でした。

 協議会の事業再生手続は,まさに,地元の町工場や家族経営の企業でも,十分利用可能な手続といえます。

 ただし,債権放棄案件では,その大半でスポンサーがついており,逆に言えばスポンサーの選定が困難な場合には,金融機関も支援に消極的であり,再生計画の策定が困難な場合があるといえます。

 

 財務状況や,公租公課の滞納の有無,粉飾の有無,スポンサーの有無など,様々な要素によっては再生計画の策定が困難な場合もありますが,とにもかくにも,一度窓口相談に行ってみるのが良いと思います。

 もちろん,弊所でもサポートさせていただきますので,遠慮なくお問い合わせください。

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