零細事業者のための事業再生手続について

当事務所では,法人及び事業者の破産再生に,特に力を入れています。

そのため,日々,法人及び事業者の皆様から,多数の御相談をいただいています。

そうした中で,必要性を強く感じているのが,表題に書いた「零細事業者のための再生手続」です。

 

当事務所に相談に来られる事業者の規模は様々ですが,中小事業者,特に家族経営の零細事業者が大半を締めます。

社員10名以下の建設業,親子に加えて数名の社員で切り盛りをしている製造業,町のカメラ屋さんや,飲食店など。

こうした事業者に共通して言えることは,過剰債務のため,リスケジュール及びリスケ期間中の経営改善では再建が困難な状況にあるということです。

こうした企業を再建するためには,過剰債務を圧縮するための債権カットが必要となります。

 

ただ,金融機関は,交渉(純粋私的整理)による債権カットには,ほぼ応じてくれません。

もちろん金融機関側にも様々な事情があります。

我々弁護士としてもその点は重々承知しており,モラルハザードの危険もあるので債権カットの要請は慎重であるべきです。

 

では,どういった場合に,債権カットに応じてくれるかというと,裁判所で行う民事再生手続を利用した場合です。

また,近年徐々に増えつつある準則型私的整理手続を利用する場合にも,債権カットに応じてもらえるケースが少ないながらあります。

準則型私的整理手続としては,中小企業再生支援協議会を利用した手続,REVIC,事業再生ADR,裁判所の特定調停を利用した手続など,いくつかの選択肢があります。

 

ただ,以上述べた,民事再生手続や,準則型私的整理手続には,手続費用が膨大にかかります。

どの手続を選択するかによって全く異なりますが,少なくとも200万円から500万円程度は見込んでおく必要があります。

つまり,会社を再建しようとしても,上記程度の流動資産がなければ,これら手続を選択することすらできないのです。

この手続費用の高さから,再建を断念した事業者を,私はたくさん見てきました。

 

零細事業者にとって,500万円もの現預金は,大金です。

それだけの資産があれば,弁護士には相談しようとしないでしょう。

顧問税理士がいて,適時にアドバイスを行っていれば事前に手を打つことができるでしょうが,多くはそうでありません。

こういった背景もあり,当事務所に相談に来られる時点では,資金ショートまで1カ月を切っており,流動資産も100万円以下という状況にあり,到底,手続費用を用意できないというケースがほとんどなのです。

 

では,こうした零細事業者は,すべからく破産手続を選択するべきなのでしょうか。

私は,そうは思いません。

なぜなら,日本の経済を,日本国民の生活を支えているのは,まさに零細事業者だからです。

手続費用が安価な「零細事業者のための再生手続」の創設が必要であると考えます。

この視点は,数年前から持っており,先日発行された金融法務事情という専門誌にも,同様の意見が掲載されていました。

 

なお,以上は,法人についての話であり,個人事業主の場合には,手続費用が安価な個人再生手続を利用することができます。

安価と言っても,弁護士費用と併せて,100万円程度はかかりますが,法人の民事再生手続の手続費用とは雲泥の差です。

この個人再生手続を利用して再生している個人事業主を,私は多く知っています。

 

個人事業主ではないが,大規模法人でもない。

狭間にいる零細事業者を救わずして,日本の未来はありません。

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