事例5
不動産屋さんのKさんは、80歳。
Kさんは,妻Bさんと結婚し,Bさんとの間に子Cを授かりました。
しかし,妻Bさんは,40年前に他界。
Bさんの死後,子Cは,東京へ。
その後,Cは,一度も,Kの住む大阪に戻って来ません。
ここ10年ほど,Kさんの面倒を見てくれているのは,姪のDさんです。
Dは,両親を亡くした後,Kさんを頼り,Kさんの家で生活をしていました。
Dは,恩返しに,炊事洗濯はもちろん,Kさんを旅行にも連れて行ってくれました。
Kさんには,現時点で,これまで蓄えた預金2000万円と,今住んでいる自宅があります。
Kさんは,自分の遺産のうち,今住んでいる自宅だけでも,Dさんに残したいと思うようになりました。
検討
1 遺言を作っていない場合
遺言を作っていない場合にどうなるか。
相続人は,Cのみ。
Dには相続権がない。
遺言を作っていないと,Dに自宅を残すことはできない。
2 事例の続き
そこで,Kは,「自宅をDに」という遺言を作ることに。
事前に遺留分も考えました。
近所の売り出しチラシを見ると,自宅は2000万円ほどと思われました。
現時点で,預金は,2000万円ほど。
仮に,自宅をDに相続させると,Cの遺留分は,(2000+2000)×1×2分の1=2000万円。
預金2000万円をCが相続すれば,遺留分も賄えるだろう。
したがって,「自宅をDに」という遺言を作っておけば,死後,CとDは揉めることはないだろうと考えました。
しかし,CとDは揉めることに。。。
3 なぜ揉めたのか?考えられるリスク
① 現預金の減少
・ 現預金については,遺言作成後に,目減りすることが多い。
・ 相続発生時には,遺留分を下回る程度の預金しか残っていなかった。
② 不動産価値の調査不足
・ 自宅の価値が思った以上に高かった。
・ そのため,Cの遺留分額が2000万円を超えてしまった。
4 遺留分対策は資産の評価から
・ 遺留分対策を考えるときは,資産の洗い出し,資産価値の評価を丁寧にすることが重要!!
・ 特に,不動産や金融資産,自社株式などは評価が難しいので要注意。
・ また,現預金については目減りすることが想定されるので,生命保険などで対策するのが無難。