最後に、第三者承継について紹介します。
最近では、職業の多様化により、親族内承継は難しくなってきています。
そのため、社外の第三者に承継するケースが増えてきています。
1 承継先の探索
承継先をどのように探すかという問題があります。
取引先や知人等に承継できれば安心ですが、そういった承継先が見つからないケースも多いです。
その場合には、第三者の助力を得て買い手を見つける方法を考える必要があります。
大企業であれば民間業者に紹介を依頼することもできますが、小規模事業者では、費用が高額であることもあって、利用が難しいと言えます。
そういった場合には、各都道府県の商工会議所等に設置されている、「事業引き継ぎセンター」に相談する方法もあります。
2 承継先による調査(D.D.)
また、第三者承継の場合には、譲受会社による調査を受けることになります。
これをデューデリジェンスといいます。
中小事業者の第三者承継であれば、財務面の調査だけの場合が多いと言えます。
3 譲渡の方法
さらに、調査を経て、問題ないとなると、いよいよ第三者に事業を譲渡することになります。
譲渡方法としては、株式譲渡、事業譲渡、合併などがあります。
ただ、中小企業の譲渡の大半は、株式譲渡です。
① 前提としての株主の特定
株式譲渡の場合には、株主の特定が重要です。
案外、株式が誰に帰属しているのかが不明確になっている、中小企業は多いと言えます。
株主名簿があればそれを確認することになります。
また、5年以上不明の株主については、競売実施による株式取得(会社法197条)なども活用できます。
さらに、定款で株券発行の有無を確認することも重要となってきます。
もし株主が株券を喪失している場合には、株券喪失登録制度(223)や表明保証条項を活用することになります。
② 各種決議を確実に履行
また、いずれの場合でも、取締役会決議や株主総会決議など、必要な手続をすべてもれなく履行する必要があります。
普段、株主総会を開いていない会社でも、この時ばかりは、きちんと法律に則って総会を開催し、決議をする必要があります。
③ 債務超過の場合
以上は、利益の出ている会社の譲渡のケースですが、債務超過の会社の承継では異なる対応が必要になります。
債務超過の会社で事業承継を考える場合には、いわゆる第二会社方式を用いることが一般的です。
具体的には、会社の中の優良部門のみを第三者に事業承継し、不採算部門は既存の会社に残して、後日、特定調停や特別清算によって既存の会社を清算する方法です。
債権者への返済は、第三者に事業を承継した際に、第三者から受け取る譲渡代金を充てることになります。
また、代表者保証については、先程ご紹介した、経営者保証に関するガイドラインを用いて整理することで、破産を回避することができます。
この第二会社方式をとる場合には、金融債権者との事前調整、事業譲渡代金の適正さが重要なポイントとなります。
債務超過の場合には破産手続を選択することもありますが、優良事業がある場合や、当該地域においてライフラインとなっている事業、地域の雇用を担っている場合、廃業による利害関係人の混乱が大きい場合には、あえて、第二会社方式を選択して、第三者のもとで事業を継続することも考えることもあります。