相続手続の流れについて

1) 遺言書の確認

 あなたの近親者がお亡くなりになった場合は、まず遺言書が残されているかどうかを確認しましょう。もし自宅で遺言書を発見した場合は、勝手に開封してはいけません。また、放置してもいけません。

 できるだけ早く、家庭裁判所で遺言書検認の手続をしましょう。手続の仕方が分からなければ、当事務所にご相談ください。

 

2) 相続人の確定

 次に、お亡くなりになった方(被相続人といいます)の戸籍を確認して、相続人を調査しましょう。

 相続人を探すためには、被相続人が生まれてから死亡するまでの全ての戸籍を取得して確認することが必要です。もしかしたら、お亡くなりになった方に、隠し子がいるかもしれませんし、連絡を取っていない兄弟姉妹がいるかもしれません。そういった人がいるとは考えられないという場合でも、必ず戸籍を取得して内容を確認してください。

 次に、戸籍を取得したら、法定相続人を確定させます。誰が相続人であるかについては、民法という法律が定めています。もし、分からなければ、当事務所にご相談ください。丁寧に説明させていただきます。

 

3) 相続財産の調査

① 相続財産の調査は漏れがないように!

また、相続人の確定と並行して、お亡くなりになった方の財産も調査します。

 現金や預貯金(普通預金、定期預金)だけでなく、不動産、株式、受取人が指定されていない保険など、全ての財産が相続の対象となります。

 後で新たに相続財産が発見されると、遺産分割協議をやり直さなければなりませんので、相続財産だと思われるものは、きちんと調査してください。

 例えば、銀行預金が遺産に含まれている場合は、銀行の窓口へ行き、亡くなる3年ほど前まで遡って預貯金の入出金の履歴(取引履歴)を取得し、預金の移動を確認すべきです。保険に加入していることが分かったり、時には、他の相続人による使い込みが発覚したりすることもあります。少しでも疑問点や気になる点があれば調査してください。

 

② マイナスの財産の調査も重要

 また、プラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産が残されているかもしれませんので、マイナスの財産についてもきちんと調べてください。

 被相続人が事業をしていたり、あるいは、過去に借金をしていたとの噂を耳にしている場合には、借金が残されている可能性が高いので、慎重に調査する必要があります。

 被相続人が住んでいた家や、その家の郵便受けの中に、債権者からの督促状等がないか確認してください。場合によっては、指定信用情報機関に信用情報の開示を求める必要があるかもしれません。

 

③ マイナスの財産の方が多い場合には…

 そして、調査の結果、マイナスの財産の方が多いということになれば、期限内に、相続放棄又は限定承認という手続きをしなければいけません。万一、期限内にこれら手続をしなければ、被相続人のプラスの財産だけでなく、マイナスの財産もすべて相続しなければならず、あなたの人生を狂わせることにもなりかねません。

 このように、マイナスの財産がある可能性がある場合には、迅速かつ慎重な調査が必要となりますので、被相続人の死亡が確認された時点で、あるいは、被相続人の死亡を知った時点で、すぐに弁護士に相談しましょう。

 

4) 遺産分割協議

① 遺産分割の方法

 相続人と相続財産が確定したら、次に、誰がどの財産を受け取るのかについて、相続人全員で、話し合いを行います。この話し合いを遺産分割協議と言います。

 まず、遺産分割の方法には、現物分割、換価分割、代償分割の3つの方法があります。

 現物分割は、相続財産をそのまま配分することです。次に、換価分割は、相続財産を売却して、そのお金を配分する方法です。最後に、代償分割は、相続財産の価値を計算して、その価額を相続人間でやり取りする方法です。

 現物分割が一番シンプルな方法ですが、遺産に土地や建物が含まれている場合にはそのままの状態で平等に配分することは難しいので、換価分割や代償分割を組み合わせて配分することが一般的です。

 

② 遺産分割協議書を作成しよう

 そして、話し合いがまとまったら、必ず遺産分割協議書を作成してください。

 口頭での話し合いにとどめてしまうと、後に証拠として残りません。 後で「言った」「言わない」の争いになったときに、必ずトラブルとなりますので、必ず書面にして残すべきです。

 なお、遺産分割協議書を作成する場合には、署名押印する前に、相続の専門家である弁護士に相談し、内容に問題はないか確認してもらうことを強くおすすめします。

 弁護士に相談することで、相続人漏れによる遺産分割協議のやり直しを防ぐことができますし、場合によっては、皆様が知らなかった遺産が見つかる可能性もあります。また、負債がある場合には特に注意が必要です。

 

③ 公正証書の活用

 こうして、弁護士に遺産分割協議書の確認をしてもらったら、最後に、公証人役場で、公正証書として遺産分割協議書を作成してください。

 公正証書として作成しておけば、後日、遺産や代償金のやり取りで紛争が起きた時に、速やかに財産を獲得することが出来ます。また、脅されて無理矢理サインをさせられたであるとか、内容を知らずにサインしたといった言い掛かりを、完全に封じることが出来ます。

 当事務所は、同じビル内に公証人役場(上六公証役場)が入っていますので、よりスムーズに遺産分割協議書を作成することができます。

 

5) 話し合いがまとまらなかったら?

① よく見かけるケース

 相続人の間で話し合いがまとまらない場合もあると思います。

 ⑴ 特定の相続人が生前又は死後に遺産を管理していたが、遺産の一部が行方不明になっている。当該相続人はどこに行ったか分からない、自分は与り知らない、被相続人に全て渡したと言っている場合。あるいは、逆に、遺産の使い込みを疑われている場合。

 ⑵ また、晩年、被相続人の看病をしたり、被相続人の事業を手伝っていたなどの事情があって、特定の相続人が法定相続分による分割を拒否している場合(いわゆる寄与分を主張している場合)。

 ⑶ さらには、特定の相続人が、生前贈与を受けている可能性があるため、他の相続人が、法定相続分による分割を拒否している場合(いわゆる特別受益を主張している場合)。

 ⑷ 遺言はあるが、筆跡が被相続人のものと異なる場合。遺言が作成された時、被相続人が重度の認知症になっており、自分で書いたとは考えられない場合。

 ⑸ 特定の相続人が、遺言を破棄し、遺言の内容を改変した恐れがある場合。

 

② 遺産分割調停・審判

 遺産分割協議がまとまらない理由は、事案によって様々です。こういった場合には、当事者間だけでは話がまとまらないので、弁護士に依頼し、家庭裁判所に対し、遺産分割調停の申し立てを行う必要があります。

 遺産分割調停は、第三者を交えた話し合いです。裁判所の調停委員会が、中立公平な立場で相続人の希望を聞き取り、双方の歩み寄りをサポートします。

 調停でも話がまとまらない場合は、審判に移行します。審判になると、裁判官が最終的な決定を行いますが、裁判官の判断には強制力があるので、相続人全員がこの判断に従わなければなりません。

 

 遺産相続については、ネットで検索すれば、様々な情報を目にすることが出来ます。法律がどのように定めているのかを知ることが目的なのであれば、ネットの情報のみでも良いかもしれません。

 しかし、重要なのは、法律を前提にして、具体的に、どのように行動すべきかです。ネットに書いてある事例があなたに当てはまると思い込み、ネット上のアドバイスどおりに行動していませんか。

 あなたの事例がそれらネットの記事が想定する事例ではないかもしれません。また、あなたの事例に特別な事情があって、ネットの記事が想定している範囲を超えているかもしれません。さらに、ネットの記事が間違っている可能性もゼロではありません。

 遺産相続については、必ず、一度は弁護士に相談してください。

 

お問い合わせ

トップへ戻る

0120-483-026 問い合わせバナー