成年後見・財産管理について

1) 成年後見制度とは

成年後見制度とは、従来民法に規定されていた「禁治産制度・準禁治産制度」を廃止して、これに代わり2000年に新たに制定された、認知症のお年寄りや、精神障がい、知的障がいなどのため法的判断能力が低下した成人のための権利擁護制度です。

このような人たちが、日常生活の中で、時に高価なものを買うことがあり、その結果、大切な財産を失ってしまい、生活が立ち行かなく恐れがあります。

そこで、家庭裁判所が、その人のために、その人に代わって判断する代理権を与えたり、その人の判断に同意を与える人を選任し、同意なしに行った不適切な法律行為を取消す権限を認めたりします。

ただ、喫茶店でコーヒーを飲んだり、電車に乗ったりするような日常生活で繰り返される程度の行為は本人の判断に任せるべきで、事細かく干渉できないことになっています。

この制度が予定している権利擁護の分野は日常生活支援(身辺監護)と財産管理の分野で、婚姻、離婚などの身分関係に関わる行為に干渉しないことになっています。

民法にはこの制度として、本人の法的判断能力の低下の程度に応じて「成年後見人」「保佐人」「補助人」の3段階の制度を認め、段階に応じて、本人が自己決定できる領域を広めたる狭めたりすることになっています。

平成27年の家庭裁判所に申し立てられた件数は34,782件で、この内、8割程度が後見申し立てになっています。

そして8割弱が申し立てから2カ月内に成年後見人が選任され終結しています。

申立人は本人の子が多いですが、近親者がいない場合は居住地の市長の名前で申し立てでき、申立人の17%程度になっています。

家庭裁判所は、成年後見人らに対して、財産管理の状況について、年に1回報告させ、適切に管理がなされているかをチェックすることになっています。

 

2) 成年後見制度から意思決定支援制度へ

このように、この制度は本人が自分らしく生きれるように、法的判断能力の不十分な程度に応じて補完し、安定した社会生活が送れるように配慮されていますが、本人にとっては「よけいなおせっかい」と思われることもあります。

自己決定を尊重すると言いながら後見人が後見人個人の価値観で本人の判断を取り消したりしてしまうと、本来の「権利擁護制度」が「本人に対する不当な干渉」になってしまう危険があります。

最近は新たな枠組みとして「意思決定支援」制度が提唱され、人は誰にも干渉されない自己決定権が保障され、その人の納得を得ながら個別に支援の必要な範囲を決めていく制度が模索されています。

国連の障害者権利条約もそのような方向を推奨しています。

 

3) 信頼できる後見人を自分で選任する(任意後見制度)

成年後見制度は、本人のための権利擁護を担当する人を家庭裁判所が親族ほか弁護士、司法書士、社会福祉士などの親族以外の専門職の中から選任することになっていますが、初対面の人から「今日から私があなたの通帳を預かって管理することになりました」と言われても、納得が行かないことがあります。

そこで、例えば、認知症の高齢者の場合は、未だ元気なうちに、将来認知症になって法的に重要な判断できなくなったら「この人」に任せたい、という人をあらかじめ指名しておくことができます。

ただ、その人が本人の信頼に応えるように「監督人」を家庭裁判所が選任することになっています。

当事務所は、成年後見制度の施行当初から、積極的に成年後見業務を行っておりますので、是非、お気軽にご相談ください。

 

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