1) 事業の再生について
当事務所は、中小零細企業、より具体的に言うと、業態にもよりますが、概ね売上高10億円未満の事業の再生支援に特化しています。ここには個人事業主も含みます。
これらの規模の事業の場合、事業再建のために捻出できる資金(弁護士費用を含む)が乏しく、事業再生の手法が限られます。
裁判所での民事再生はもとより、準則型私的整理手続と言われる、事業再生ADRや地域活性化支援機構(REVIC)などを利用した事業再建はほぼ不可能です。中小企業再生支援協議会ですら、数百万円の手続費用が掛かります。そのため、大手の法律事務所が再生支援に動くことはあまりありません。
そして、このように専門家の支援を受けることが出来ない場合には、何らの手も打つことができず、資金繰りが悪化していくのをただ見ているしかできません。客観的に見れば破綻しているにもかかわらず、対処法がわからないため、資金が完全に枯渇するまで事業を継続してしまい、破産手続すらできないという場合もあります。
しかし、日本経済の根幹を支えているのは、まさに、この規模の中小零細企業です。
放置していいはずがありません。
また、これらの規模の事業でも、早い時期に着手すれば、再建できる可能性は十分あります。
そして、万一、再建が困難な場合であっても、早い段階で方向転換することで、従業員や取引先への影響を小さくすることができ、なによりも代表者や事業主自身の生活再建も可能となります。
当事務所は、資金難に陥った中小零細企業の経営者を独りにせず、経営者に寄り添い、経営者と二人三脚で、事業の再建、そして生活再建を目指します。
① 資金繰りの相談
まず、この規模の事業で重要なのは、とにかく、早い段階で、専門家に相談するということです。
突然、メインの取引先から来期以降の発注を白紙にすると言われた。売掛先が債務超過に陥り、予定していた売掛金の回収が困難になった。あるいは、徐々に売上が減ってきており、近いうちに、金融債務の返済が滞る可能性がある。切欠がある場合にはその時に、明確に窮境原因が分からないでも経験上危ないと感じた段階で、直ぐに相談してください。
自社に顧問税理士がおり、経営面でも十分なアドバイスをしてくれるなら、当該税理士に、もし顧問税理士がおらず、あるいは、相談しても具体的なアドバイスがない場合には、当事務所にできるだけ早く相談してください。
弁護士が介入することで窮境原因が解消される場合はあります。
また、直ちに、窮境原因を取り除くことが難しい場合には、資金繰り表を作成し、資金繰りを可視化することで、将来への漠然とした不安を取り除くとともに、資金ショートの可能性やその時期を具体的に把握します。
そして、これらを土台に、具体的な方策を練っていきます。
日々、目の前の仕事に追われて、手を打つべき時機を逃さないでください。
不甲斐なさや後ろめたさから、経営者の仲間にも家族にも相談できないかもしれませんが、独りで対処しようとしないでください。独りで対処しようとすれば、本業が疎かになり、提供する品質が低下し、新たなアイデアの創造が困難となり、悪循環に陥っていきます。
資金難に陥った場合には、あるいは、その危険性を少しでも感じたら、できるだけ早く、相談してください。
相談したからといって、直ちに依頼する必要はありません。相談料もほとんどの場合、数万円以内に収まります。
相談時期が早ければ早いほど、再建可能性は高くなります。
私たちは、あなたを独りにしません。
② 事業を再生するために大切なこと
ある程度、資金に余裕がある場合には、中小企業再生支援協議会を利用することも検討できます。ただ、中小零細企業にとって、再生支援協議会を利用するための手続コストは決して安くはありません。
そのため、こうした第三者機関の関与なしに、金融債権者と直接交渉することで事業の再建を図ります。なお、この場合、交渉相手となるのは金融債権者のみです。取引債務については、平常通り返済を続けることを前提としています。
ただ、金融債権者としては、裁判所はおろか、第三者機関の関与もない中で、事業再生に協力することになります。
そのため、金融機関としては、当該企業が資産を隠しているのではないか、他の金融債権者との間で不平等な扱いを受けるのではないか等の不安が常に付きまといます。
再生を目指す企業としては、手続の公平性・公正性・透明性を大切にしながら、金融機関と誠実に向き合っていく必要があります。こうした姿勢で対応しなければ、金融債権者から協力を得ることはできず、事業を再生することも不可能と言えます。
③ 事業を再生するための具体的方策
中小零細企業の事業再生においてメインとなるのは、金融債務のリスケジュールです。
金融機関からの融資について、金融機関と交渉し、返済条件や返済予定を変更してもらうのです。このようにして毎月の返済額を減らすことで、資金繰りを改善していきます。なお、金利の引き下げについても、金融機関に要請する場合があります。既にリスケ済みのケースでも、他の財務リストラや事業リストラを行い、最後まで事業再建の道を探ります。
また、中小企業再生支援協議会を利用する余力がある場合には、第二会社方式を利用することができます。
第二会社方式とは、会社分割や新たに会社を設立することによって、今の会社とは別の会社を作り、今の会社(旧会社)の事業のうち収益性の高い事業を別の会社(新会社)に移すという方法を用いることもできます。この場合、従来の金融債権者は、新会社から旧会社に支払われる譲渡対価のみによって、債務の弁済を受けることになります。また、債務の一部について免除を受けることも可能です。
さらに、金融債務の返済を猶予してもらうだけでは、近い将来、取引債務の返済もできなくなる恐れがあるなど、資金繰りがひっ迫しているようなケースでは、外部にスポンサーを探し、スポンサーからの支援を前提として、金融機関と交渉するという場合もあります。
2) 事業の清算について
① 破産手続
以上のように、原則として、事業の再建を目指しますが、事業の収益性や資金繰りのひっ迫度合いなどによっては、事業の清算も考える必要が出てきます。
具体的には、破産手続や特別清算を考える必要が生じます。ただ、破産手続を行うにも費用が掛かりますし、何よりも、従業員や取引先等に与える影響は甚大ですので、資金が完全に枯渇する前に、ある程度、余力がある段階で破産手続に向けて舵を切る必要があります。
非常に厳しい決断を迫られることになりますが、これまで苦しい時を支えてくれた従業員や取引先のことを第一に考えるのであれば、早期に決断しなければなりません。
また、そうした決断をすることで、関係取引先や同業他社が、代表者の再スタートを支援してくれる可能性が高まり、場合によっては、雇用の可能性も出てきます。
② 経営者保証に関するガイドライン
また、企業が破産手続を行う場合には、当該企業の金融債務について保証人となっていた代表者もまた、破産手続を行うのが一般的でした。
ただ、近時、経営者保証に関するガイドラインというものが策定され、一定の要件を満たす場合には、経営者は破産手続をすることなく保証債務を整理することができ、また破産手続を選択した場合よりも多くの財産(いわゆるインセンティブ資産)を保有することが認められる可能性が出てきました。
さらに、経営者保証に関するガイドラインを用いた場合には、債務整理を行った事実について信用情報機関(いわゆるブラックリスト)に登録されないというメリットもあります。
経営者保証ガイドラインを利用するには、いくつかのハードルがあり、決して簡単ではありませんが、廃業に向けて早期に舵を切ることで、代表者自身の再スタートも十分可能になります。
3) 最後に
余力があるうちに廃業に向けて舵を切ることは、決して容易なことではありません。
先代から受け継いだ会社を自分の代で畳むことへの葛藤。
もう少し続ければ状況が好転するのではないかという期待感。
廃業したら自分や家族はどうなるのか、家族や従業員に何と説明すればよいのか。
いろいろな思いが交錯していると思います。
ですが、どうか、決断するタイミングを逸しないでください。
あなたの悩みや葛藤、廃業後の人生への不安、全てを受け止めます。
一緒に受け止めます。
そして、最後まで、あなたに寄り添い、あなたが人生を再スタートさせるまで、あなたのそばに居続けます。
だから、勇気を出して決断してください。