今回の民法改正で、自筆証書遺言に関しても大きな改正がおこなわれました。
一つ前の記事で、自筆証書遺言の方式が緩和されたというお話をしました。
もう一つの改正点は、遺言書保管制度の創設です。
自筆証書遺言は古くからありました。
しかし、遺言書の紛失や遺言書の隠匿の危険性が高いという問題点がありました。
そこで、これらの問題点を解消する方法として、法務局において自筆証書遺言を補完する制度が創設されました。
詳しくは、「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が定めています。
制度の概要を紹介します。
なお、詳細は、末尾に引用するリンク先をご覧ください。
まずは、<遺言書の保管を申請する方法>について、紹介します。
⑴ 保管の申請者
保管の申請者は、遺言者のみです。
⑵ 管轄
保管制度を初めて利用する場合には、①遺言者住所地、②遺言者本籍地、③遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所のいずれかに、保管を求めます。
⑶ 保管の申請方法
まず、遺言者自らが遺言書保管所に出頭する必要があります。
出頭の際には、⑴自筆証書遺言(ただし封印していないもの)、⑵遺言者の氏名・出生年月日・住所・本籍を証明する書類、⑶本人確認書類などが必要となります。
また、備え付けの申請書に必要事項を記載して提出する必要があります。必要事項としては、例えば、遺言に遺言執行者や受遺者の記載がある場合には、それらの者の氏名、住所を記入する必要があります。
次に、<遺言者が亡くなった場合の取り扱い>について紹介します。
⑴ 遺言書情報証明書
まず、保管された遺言書を元に、遺言書情報証明書というものが作成されます。
⑵ 閲覧・交付請求できる人
この証明書の閲覧・交付を請求できる人についても、法律が細かく定めています。
詳細は省略しますが、相続人のほか、遺言によって権利を得喪し、又は法的地位を与えられた者が閲覧・交付請求することできると考えて問題ありません。
⑶ 他の相続人等への通知
誰かが、遺言書情報証明書の交付を受けたり、また遺言書の閲覧をした時には、他の相続人や受遺者、遺言執行者に、遺言を保管していることが通知されます。
⑷ 検認不要
自筆証書遺言の場合には、原則として、家庭裁判所による検認を要します。
しかし、遺言書保管制度を利用して保管されていた遺言については、例外的に検認が不要とされます。
以上、簡単ですが制度のご紹介をしました。
詳細や実務の運用については、こちらの法務省のページをご覧ください。
なお、今回新設された遺言書保管制度は、令和2年7月10日に施行されます。遺言書保管制度を利用される場合には、上記施行日以降に,法務局で遺言書の保管を申請しましょう。
遺言書保管制度は、遺言書の紛失や隠匿を防止し、自筆証書遺言の安全性を高める制度と言えます。
もっとも、保管される遺言書についての有効性は担保されません。
また、遺言を作成する上では、争族紛争を防止する内容であること、遺留分に配慮した内容であること、相続税に配慮した内容であることなど、内容面において注意すべき点が多数あります。
遺言書保管制度を利用される場合でも、必ず一度は弁護士に保管を依頼しようと考えている遺言を見てもらい、内容に問題はないかについて、アドバイスをもらうのが賢明です。