第2 家賃滞納リスクとリスク回避の方法
家賃滞納リスクというのは,入ってくるはずの家賃が入ってこないリスクのことです。
当事務所でも,家賃の滞納に困ったオーナーさんや,オーナーさんから管理を委託された業者さんから,相談を受けることがあります。
家賃が入って来なくなると,利回りの計算が狂うだけではありません。
滞納が続いた場合には,自力で退去させることはできませんので,弁護士に依頼をして裁判をして退去させるしか方法がなく,そのための弁護士費用も掛かります。
さらに,そういった滞納者が室内に大量のごみや家財道具を放置したままにするケースがあり,その場合には,それら動産を搬出して撤去する費用もかかります。
このように,家賃滞納リスクというのは,単に家賃が入ってこないだけでなく,それ以外の様々なリスクを含んでいるのです。
これらリスクを回避する方法としては,大きく2つあります。
まずは,良い管理会社に管理を委託するということです。
家賃が滞納した場合には,滞納を放置するのではなく,滞納が発生した迅速に支払を督促し,毅然とした態度で臨むということです。
管理会社に管理を委託していれば,これを管理会社がやってくれます。
管理会社にとって家賃の督促は日常茶飯事なので,電話を掛けたり,書面を送付したりして,あの手この手で家賃の支払いを督促してくれます。
ただし,管理会社もいい加減な会社としっかり管理をしている会社がありますので,任せきりにするのは危険です。
また,管理会社に委託していれば,自ら入居者に督促する必要がありません。
次に,リスク回避の方法としては,家賃保証会社を利用するということです。
家賃保証というのは,入居者が賃料の支払ができなくなったときに,家賃保証会社が入居者に代わって家賃相当額を支払ってくれるというものです。
入居者がオーナーと賃貸借契約を締結するに際し,入居者に家賃保証会社の利用を強制して,必ず,家賃保証会社を付けるようにすれば,滞納リスクは軽減できます。
ただし,家賃保証会社の審査基準は比較て緩く,いわるゆ,ブラックリスト(信用情報)の調査をしないことがほとんどです。
なので,できれば,入居者の親族を連帯保証人でつけるのが良いと言えます。
第3 終活における収益不動産の取扱い
収益不動産を保有している方に言えることは,必ず,公正証書遺言を作成して欲しいということです。
遺言を作成していないと,オーナーの死後,当該収益不動産を誰が相続するのかで,必ずもめます。
また,揉めに揉めた末の売却処分,争っている最中の物件の管理方法について揉め,賃料の取り合いになることもあります。
遺言を書いて,収益不動産を取得する者を特定していれば,このようなトラブルは回避できます。
ただし,遺言を書く時には,遺留分にも配慮しましょう。
ちなみに,遺留分の計算や,遺留分の前提としての資産の評価,特別受益の検討など,遺留分に配慮した遺言の作成は専門性が要求されます。
事前に弁護士に相談することを強くお勧めします。
あとは,自ら物件を管理する,自主管理の方法を採っていた場合には,終活中に管理会社に管理を委託することをお勧めします。
最初に申し上げたように,収益不動産を保有するということは,賃貸事業の経営者になるということです。
相続人の方が収益不動産に縁もゆかりもなければ,突然経営者になり,頼る管理会社もいないと途方に暮れるはずです。
収益不動産について熟知したオーナーが,自ら,管理会社の目利きをし,より管理会社に管理を委託した状態で次の世代に引き継ぐのが理想です。
また,相続人にとっては,入居者の属性や物件の特性などは,未知の世界です。
これらの情報をきちんと相続人に承継することは非常に難しいと言えます。
会社において,事業承継が行われないまま,突然代表者が死去し,後継者が突然代表に就任するようなものです。
管理会社に管理を委託していれば,管理会社がよいパイプ役となって,あなたと相続人をつないでくれます。
以上,簡単ですが,セミナーでお話ししたことの一部をご紹介させていただきました。
収益不動産にはリスクがあり,経営者になるという覚悟も必要ですが,それらリスク等をしっかり理解して購入すれば,有効な資産形成の手段と言えると思います。
当事務所では,販売専門の不動産業者,管理を手掛ける管理会社など,不動産にまつわる会社さんの顧問をしており,日々,御相談をいただいております。
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