介護事故について

1) 大切な家族が介護事故に遭遇した場合

 ご家族が介護事故に遭遇した場合には、施設に対して民事責任を追及することになりますが、施設と直接交渉することは稀です。

 介護等施設は、ほとんどの場合、損保会社との間で損害保険契約を締結しています。

 そのため、施設内外を問わず、介護事故が起こった場合には、施設が契約している損保会社が交渉の相手方となるのです。

 そして、介護施設の保険を扱っている損保会社は、日常的に介護事故に対応しており、また、損保会社の顧問弁護士は、介護事故に関する多様な裁判例を把握し、かつ、他の同種事案の解決を踏まえて交渉に臨んできます。

 そのため、介護事故の被害者が、弁護士に損保会社との賠償交渉を依頼する場合には、これら相手方と対等に渡り合うべく、介護事故に関する多様な裁判例を把握しており、介護事故に関する十分な知識と経験を有する弁護士に依頼することが重要になります。

 

2) ご本人の判断能力が十分でない場合

 また、弁護士に依頼する場合には、ご本人に判断能力があるかどうかによって、進め方が大きく変わってきます。
 
 ご本人の判断能力に問題がない場合には、ご本人がそのままの状態で弁護士に依頼できます。不幸にも、ご本人が亡くなられた場合には、ご本人の法定相続人の方が弁護士との間で委任契約を締結することになります。

 他方、ご本人に認知症などの精神疾患がある場合には、弁護士との間で委任契約を締結できない可能性があります。

 

 そのため、このような場合には、まず、介護事故の賠償交渉を依頼する予定の弁護士の助言を得ながら、家族が自ら「成年後見審判の申し立て」を行い、裁判所に当該弁護士を成年後見人に選任してもらう必要があります。

 無事、成年後見の審判が出た場合には、成年後見人にされた当該弁護士が、ご本人の成年後見人として、損保会社との間で賠償交渉を始めることになります。

 

3) 交渉を開始する前になすべきこと

 介護事故に遭遇した場合には、相手方に対し、不法行為責任というものと、介護契約に基づく債務不履行責任というものを追及することになります。

 ただ、いずれの責任を問う場合でも、施設側の過失や、事故と損害との因果関係などについて証明する責任を負うのは、被害者側です。

 そして、これら事実を立証するためには証拠が必要ですが、ほとんどの場合、これら証拠は施設側の手の中にあります。
 
 このため、介護事故に遭遇した場合には、施設側からこれら証拠を入手する必要があります。

 ただ、「あなたに対して賠償請求をするために、あなたの手元にある証拠が必要だから、証拠をください。」と言っても、証拠を出してくれない可能性があります。

 

 そこで、民事訴訟法で定められた証拠保全という手続を使って、施設側から証拠を入手することになります。

 ただ、既に、賠償交渉を開始してから、証拠保全を行うのは得策ではありません。

 なぜなら、施設側が、自分にとって不利な証拠を隠したり、改ざんしたりする可能性が否定できないからです。

 そのため、証拠保全は、賠償交渉を行う前に行うのがベターです。

 

3) 介護事故の交渉の進め方

 一般の民事事件であれば、まずは、相手方との間で任意の交渉を行い、交渉が決裂した場合には、裁判所に対し、民事訴訟を提起するのが一般的です。
 

 ただ、介護事故に関しては、すぐに訴訟を始めるのではなく、簡易裁判所での「調停」という話し合いを行うことがあります。

 調停も、任意の交渉と同じで、最終的には双方の合意が前提となりますが、当事者双方が自分の言い分とそれを裏付ける証拠を提出するとともに、調停委員という第三者がそれら主張立証について意見を述べ、紛争解決のために助言をしてくれるので、任意の交渉よりも合意に至る可能性は高いと言えます。

 また、施設には社会的立場があり、他の多くの利用者を抱えていますので、仮に、損害の立証等、被害者側にとって不利な点があったとしても、事前交渉で施設側が一定の法的責任を自ら認めているような場合には、調停において施設側の譲歩を引き出すことは可能です。

 

 このように、介護事故の解決には、調停制度が有効です。

 なお、調停などにおいて、和解をする場合には、和解条項の中に、「謝罪」「再発防止の約束」といった条項を盛り込むこともあります。

 例えば、「今回の事故により申立人に重大な被害が発生したことを重く受け止め、今後同様の事故が再び発生することのないように、利用者に対する目配りを実施し、職員研修を実施することを確約する」といった文言を双方の協議で盛り込む場合があります。

 とりたてて法律的な意味があるわけではありませんが、「調停調書に記載されている」という意味で、施設側においては「戒め」となり、事故の再発を防止する抑止力になります。

 

4) 最後に

 家族の知らないところで事故は起きます。

 特に、ご本人に認知症等の精神疾患がある場合には、原因が分からないことが多いと言えます。

 施設側の説明に疑問を抱く場合もあると思います。

 ただ、ご家族が自ら対応することは非常に困難です。

 

 当事務所の弁護士池田直樹は、介護事故が社会で認知されるようになるよりも前から、介護事故の被害者支援に取り組み、数多くの介護事故を解決してきました。

 施設側が過失を認めている場合だけでなく、過失はないとする施設側の説明に疑問がある場合には、是非一度、当事務所にご相談ください。

 

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