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会社の資金繰りについて(その2)

2022-02-15

 

先日、「会社の資金繰りについて」と題して記事を投稿させていただきました。

前回の投稿では、資金繰りの概要についてお話した後、業種による資金繰りの違いについても紹介させていただきました。

そこで今回は、資金繰りが悪化する要因について、お話したいと思います。

いずれについても、コロナ禍では注意が必要ですので、是非ご覧いただければ幸いです。

 

第3 資金繰りが悪化する要因

1 慢性的な赤字

まずは、慢性的な赤字です。

当然のことですが、売上の減少が続くと、売上に比例しない固定費の負担が重くなり、資金繰りが悪化します。

利益は全ての源泉です。

売上の減少に伴い経常利益がマイナスとなった場合には、必ず現状分析をして課題を見つけ、経営を改善する必要があります。

 

2 滞留在庫(不良在庫)

滞留在庫というのは、仕入れた商品や材料、あるいは完成した製品が売れずに、会社に売れ残った場合の在庫のこと総称したものです。

まず、当然のことですが、材料等を購入すれば、購入した分だけ資金は出ていきますので、在庫が売れなければ、資金は減ったままであり、資金繰りが悪化します。

また、勘違いしやすい点が、在庫と費用の関係です。

在庫は当期に使った分しか費用になりません。

例えば、期末になって、社内は在庫の山だけれども、今年はたくさん在庫を仕入れて代金を支払っていて、その分経費がかさんでいるから、利益は少なめだろうと考えたら、それは間違いです。当期に使った分しか費用になりませんので、この点を誤解していると、想定しているよりも多くの利益が出てしまい、それに見合った税金が課せられることになります。

現在、コロナ禍によって、サプライチェーンが大きく停滞しており、材料不足が大きな課題になっています。

仕事はあるのに材料がなく、製品が作れないという企業が多数あります。

そうした企業は、機会損失を避けたいという気持ちが強く、在庫を多めに抱えたいと思うでしょう。

もちろん、それは、一つの経営判断であり、適切な判断だと思います。

ただ、仕入れた在庫が滞留すると、資金繰りの悪化を招きます。

この点をしっかり念頭に置いた上で、自社における適正在庫はどの程度かを常に考えて、平常時よりも多くの在庫を仕入れる判断をした場合には、いつも以上に資金繰りの把握を徹底することが重要です。

 

3 滞留債権

次に、滞留債権です。

滞留債権とは、売掛金の回収時期が延びている債権、あるいは回収が困難になっている債権のことを言います。

これも、コロナ禍で急増しています。

滞留債権が増えると、売上が上がっているけれども、回収が出来ないため資金が増えず、資金繰りが悪化します。

また、滞留債権の怖いところは、売上が立っているということです。

売上が立っているため、決算期には売上高に含まれ、最終的に当期利益を構成します。

つまり、資金は入ってきていないのに、利益が出てしまい、さらに、それに応じた税金が課されるということになります。

さらに、滞留債権の場合は、売上や利益が伸びているため、経営者が安心してしまい、余分な経費や投資を行うなど、資金を減らす方向に判断が傾きやすいといえます。

このように、滞留債権は、滞留在庫以上に資金繰りに与える影響が大きいので、注意が必要です。

日頃から、債権の回収状況に気を配っておく必要があります。

 

4 設備投資の失敗

設備投資の失敗は、資金繰りを大きく悪化させます。

当事務所は倒産事件を多く扱っていますが、倒産原因を分析していくと、いずれの企業も過去に大なり小なり投資の失敗があります。

それだけ、投資の失敗は起こりやすく、また、失敗による影響が大きいといえます。

コロナ禍を受けて、既存の事業では事業継続は難しいと判断し、急いで、設備投資や新規事業への進出を進める企業もあります。

しかし、投資計画を立てることなく見切り発車で投資を行うと、却って、企業の寿命を縮めることにもなりかねません。

そこで、以下においては、設備投資に当たり重要なポイントをいくつかご紹介したいと思います。

 

① 投資による将来収益を見極める

最も重要なのが、将来収益を見極めることです。

⑴設備投資をした場合に、いつから、どの程度売上が増加するのか。

⑵設備投資をした場合に、いつから、どの程度費用が増加するのか。

⑶その結果、設備投資をした場合に、いつから、どの程度利益が増加するのか。

これらを見極める必要があり、具体的には、投資後の翌年から最低3期程度の(変動)損益計算書を作成し、投資効果を分析する必要があります。

まず、⑴売上予測については、確実な予測は難しいと思いますが、コロナ禍を考慮し保守的に予測するのが望ましいといえます。

取引先からの増産依頼等に対応する場合には、取引先との契約内容を精査し、増産を一定期間保証してもらえるような内容にする必要があります。

他方、自社の判断で売上増を見込んで設備投資する場合には、外部環境・内部環境をしっかり分析し、投資による売上増が本当に見込めるのかを分析する必要があります。

次に、⑵費用予測については、投資をした場合にどのような経費が発生するのかを網羅的に洗い出し、分析する必要があります。

既存設備の廃棄処分費用、移転費用、設置に要する特殊工事、各種税金、修繕費、メンテンナス費、人件費、借入れの利息など、多岐に上ります。

現在のコロナ禍では売上予測が難しい状況ですので、少なくとも費用については精度の高い予測を行うことが肝要です。

 

② 投資による資金繰りを見極める

次に、収益予測ができたら、投資に伴う資金繰りを見極める必要があります。

大きく分けて、投資年度と翌年以降に大きく分けることができます。

まず、投資年度についてですが、投資時にどの程度のキャッシュが出ていくのか、そのキャッシュをどのように賄うのかです。

全額自己資金で賄う場合は、資産状況に照らしてそれほど投資額が大きくない場合だと思いますが、とはいえ投資時に大きくキャッシュが減少するので、その後の資金繰り把握は重要です。

また、補助金で投資資金の一部を賄う場合は、先に自己資金(あるいは借入金)で投資する必要がありますので、投資から補助金が入金されるまでの数カ月間の間、資金繰りが滞ることがないかしっかり把握する必要があります。

次に、投資の翌年以降についてですが、投資資金を借入れによって賄う場合は、特に重要です。

先程述べた(変動)損益計算書を土台にして、簡単なキャッシュフロー計画を作成しておくのがベターです。

 

③ 投資と借入れの関係に注意する

投資資金を借入れによって賄うことは多いと思いますが、投資と借入れの間には重要な関係があります。

具体的に紹介すると、まず、投資設備の法定耐用年数よりも、返済年数が短いと、将来、資金繰りを圧迫することになります。

また、投資回収年数(=投資額÷1年あたりの投資による増加キャッシュフロー)よりも、返済年数が短いと、同じく、資金繰りを圧迫する可能性があります。

理屈を説明すると長くなりますのでここでは省略しますが、借入れで賄う際は、上記のような返済計画にならないよう注意したいところです。

 

④ まとめ

少し長くなりましたので、この辺りでまとめたいと思います。

冒頭述べましたように、設備投資の失敗は、資金繰りを大きく悪化させ、成長を後退させるだけでなく、その規模によっては事業の存続に影響を及ぼすこともあります。

コロナ禍の現在、非常に難しい経営判断を迫られていると思いますが、拙速に投資を進めるのではなく、外部の専門家を利用するなどして必ず投資計画を策定してから、投資を実行していくことが重要です。

 

5 過剰債務

次に、過剰債務についてです。

借入の返済は、金融機関との約定に基づいて毎月行うものであり、返済額は収益と関連性がありません。

そのため、収益が悪化している状況で、従来通りの返済を継続していると、知らぬ間に資金繰りを圧迫することになります。

運転資本の負担が小さい業態でも、借入れが大きい場合には、資金繰り表を作成し、早め早めに資金不足を予測し、その手当をしておくことが重要です。

事前に予測ができていれば、金融機関とも相談をしながら、返済計画を見直すこともできます。

 

6 事業拡大や事業転換に伴う影響

最後に、事業拡大と事業転換に伴う影響です。

事業拡大時に、なぜ、資金繰りが悪化するのか不思議に思う方がいるかもしれません。

それは、運転資本が増加するからです。

事業拡大時、特に、売上拡大時は、支払が先に来て、入金がその後にくる業種の場合は、運転資本が急激に増加するため、一時的に資金が枯渇しやすいのです。

事業拡大時に、資金繰りを把握していないために、資金が枯渇してしまい、次の仕入れができず、成長が止まってしまうこともあるので、注意したいところです。

また、従来の製品群とは異なる別の製品群を取り扱うなど、多角化によって事業を拡大を図る場合には、先ほど紹介した滞留在庫が増加するリスクがありますので、同じく資金繰りに注意したいところです。

最後に、業態転換に伴う影響です。

こちらも、運転資本が絡んでいます。

以前ご紹介したように、運転資本の負担は業種業態によって大きく異なります。

これまでと異なる業種業態に業態転換する場合には、事前に、進出予定の業態に関する運転資本の特徴やポイントを事前に把握しておくことが必要です。

この辺りは、創業者であれば自然に身についていると思いますが、後継者の方で、特に承継後資金繰りに困った経験がない方は注意が必要です。

 

以上、今回は、資金繰りが悪化する要因についてご紹介させていただきました。

コロナ禍で、資金繰りが悪化する要因は飛躍的に増加しています。

今回の記事が少しでも皆様の経営に役立てば幸いです。

会社の資金繰りについて

2022-01-29

 

1月29日に、経営者の集まりである中小企業家同友会主催の勉強会が開催され、当勉強会において当事務所の弁護士池田克大が講師を務めました。

当日は、「会社の資金繰り」について、お話しさせていただきました。

弁護士池田克大は、弁護士資格のみならず認定経営革新等支援機関の資格も有しており、企業の経営改善についても業務を行っております。

そうした点から、今回、講師としてお声がけいただきました。

以下に、当日お話した内容を簡単にご紹介したいと思います。

少しでも、経営者の皆様の役に立てれば幸いです。

 

第1 資金繰りとは

1 資金繰りとは?

資金繰りとは、会社の収入と支出を管理して、手持ち資金の過不足を把握し、調整することをいいます。

ちなみに、「手持ち資金」とは、現金、普通預金、当座預金等、会社が使いたいときにいつでも自由に使えるお金を指します。

したがって、定期預金、売掛金、手形などは、通常含みません。

 

2 資金繰りがなぜ重要なのか

① 「資金」が不足すると、事業が停止する

例えば、会社の経営状態が悪い場合として、債務超過である場合や、経常利益がマイナスの場合が思い浮かぶと思いますが、これらの場合でもすぐに事業が停止することはありません。

しかし、債務超過ではなく、また経常利益がプラスであったとしても、手持ち資金が不足すると、社員の給与や取引先への支払ができなくなりますので、事業を維持することができなくなります。

 

② コロナ禍により、資金繰りが悪化する要因が飛躍的に増加

もともと、資金繰りが悪化する代表的な要因としては、以下の4点がありました。

⑴ 慢性的な営業赤字

⑵ 滞留在庫、滞留債権

⑶ 設備投資の失敗

⑷ 過剰債務

そして、コロナ禍を受けて、上記4つの悪化要因が発生する確率が飛躍的に増加しています。

この点については、後ほど詳しく紹介したいと思います。

 

③ 金融支援を受ける場合、補助金を申請する場合も、資金繰りの把握は必須

資金繰りを改善する方策として、金融機関から金融支援(融資・リスケ)を受けることが考えられますが、金融支援を受ける場合には、資金繰りの把握は必須です。

概ね、先6カ月程度の資金繰り表の提出が必要です。

また、資金繰りを補うために補助金を活用することがありますが、補助金を得ることができるのは投資をした後になります。

つまり、自己資金(あるいは融資で得た資金)で設備を購入する等の投資を行った後に最終審査がなされ、その後数カ月経ってようやく補助金が入金されます。

したがって、設備を購入してから補助金が入金されるまでの間の資金繰りの把握は重要です。

また、補助金は投資額の一部を補助するにすぎませんので、設備投資をする際は、資金繰り計画を含む投資計画を作ることが重要です。

 

④ 経営者の心の安定に資する

当事務所は、企業の倒産事件を多く扱っていますので、資金繰りに悪化した企業からの相談を受けることがしばしばあります。

こうした相談に来られる経営者に多いのは、思考がまとまらない・落ち着きがないということです。

特に、自社の資金繰りが把握できていないけれども、とにかく資金が不足して困っているというケースです。

こういった場合には、まずは資金繰り表を作成して、自社の資金繰りを見える化することが重要です。

見える化することで、いつ、いくら資金ショートするのか、この先、どのような入金があり、どのような支払があるのかを整理することができます。

そうすると、後は対策を考えればよいだけなので、漠然とした不安が解消されます。

つまり、資金繰りを把握することは、経営者の心の安定にもつながります。

 

3 黒字でも安心してはいけない

先程も、紹介しましたが、仮に経常利益がプラスであったとしても、手持ち資金が不足すると、事業を維持することができなくなります。

このように、売上が伸びているのに、利益が伸びているのに、気が付くと資金が不足していて冷や汗をかくということはよくある話です。

利益と資金がズレる要因は、いくつかありますが、ひとまずは、ズレることを知っておけばよいと思います。

したがって、毎月の経営会議では、売上や利益だけを見るのではなく、資金繰り実績を確認し、今後の資金繰りの見込みについても共有しておくことが肝要です。

経営者であれば、売上や利益については特に意識せずとも日々確認すると思いますが、資金の流れについては疎かになりがちです。

資金繰りの悪化は、目に見えない病魔のようなもので、知らず知らずのうちに会社という身体を蝕み、気が付いたときには手術をしなければない状態にしてしまうものです。

皆様の会社ではそうならないように、常日頃から確認するようにしていただきたいと思います。

 

第2 業種による資金繰りの違い

1 はじめに

資金繰りにおいて注意すべきポイントは、業種によって様々です。

そこで、資金繰りを考える上で重要な概念である「運転資本」に着目しながら、業種による違いをご紹介したいと思います。

なお、運転資本とは、厳密に言えば、「売上債権+棚卸資産-仕入債務=運転資本」とされています。

ただ、ここではより簡単に、仕入れ(売上原価に相当するもの)の代金支払時から、売上の入金時期までに必要な資金と理解していただければ結構です。

 

2 飲食業・小売業

⑴ 資金の流れ

まず、飲食業や小売業の資金の流れについてみると、大まかには以下のようになります。

【 仕入 → 売上・入金 →→ 支払 】

つまり、入金が先に来て、その後に、仕入れの支払いが来るのです。

なお、小売業の中でも在庫の保管期間(回転期間)が長い場合は、支払が先に来ることもありますので、あくまでもイメージだと思ってください。

⑵ 特徴

以上のように、飲食業等の場合は、仕入れの代金を支払う前に、仕入れた材料で商品を販売しお客様からその場で代金を受け取ることができます。

そのため、運転資本の負担が小さいか、あるいは運転資本がゼロである点が特徴的です。

⑶ ポイント

ただ、飲食業や小売業については、不良在庫が発生しやすく、在庫が滞留することで資金繰りが悪化することが多いので、在庫管理が重要になります。

また、飲食業や小売業は他業種に比して競合が多い傾向にあり、資金繰りの観点からも、売上の安定化が重要となってきます。

 

3 建設業(サービス業も類似)

⑴ 資金の流れ

次に、建設業の資金の流れについては、以下のとおりです。

【 売上 入金 → 仕入 → 支払 → 売上 →→ 入金 】

建設業の場合は、契約時または着工時に着工金として一部入金がありますが、その後は、工事が完成するまで入金がないのが一般的です。

その間の外注費や資材購入費などは、着工金で賄いますが、それでは足りない場合がほとんどですので、自己資金で賄う必要があります。

⑵ 特徴

このように、建設業の場合には、工事が完成してようやく入金があるので、それまでは自己資金でやりくりする必要があります。

また、工事完成から入金までの支払サイトが長い場合が大きので、運転資本の負担が重い傾向にあります。

⑶ ポイント

資金繰りのポイントとしては、着工金だけでなく中間金を設ける点が挙げられます。

中間金を設けることで、工期中の外注費等の支払いに充てることができますので、運転資本の負担が格段に減少します。

また、中間金を設けない場合は特にそうですが、完成報酬金が大きくなる傾向にあるため、発注元の与信管理が重要になります。

 

4 製造業

⑴ 資金の流れ

最後に、製造業についてみていきたいと思います。

【 仕入 → 支払 → 売上 → 入金 】

製造業については、材料等を仕入れた後、その支払いを行い、その後、製品が完成し納品をし、それから1~2カ月ほど経過して代金が入金されます。

⑵ 特徴

このように、製造業については、材料等の仕入代金の支払から、代金の入金までの期間が長い傾向にあるため、運転資本の負担が重い傾向にあります。

また、製造業の着工金のように、契約時に一部代金を前払いする仕組みがないため、製造業よりもさらに運転資本の負担が重いといえます。

⑶ ポイント

そこで、製造業においては、資金繰り管理が他業種に比してより重要といえます。

ポイントとしては、在庫管理の徹底はもちろんですが、リードタイムの短縮も重要です。

現場改善を進め、仕入れた材料をいかに早く製品にし、納品するかが鍵となってきます。

また、資金繰りを改善する方策としては、発注元に原材料を支給してもらう方法などが考えられます。

なお、製造業ほどではありませんが、案件規模によっては、発注元の与信管理も重要になります。

 

5 まとめ

ここまで見てきたように、運転資本の観点だけで見ても、資金繰りの特徴やポイントは様々です。

コロナ禍で業態転換を検討する企業もあると思いますが、その際は是非、業種によって資金繰りの特徴や、資金繰り把握の重要性が異なるということを思い出していただければ幸いです。

 

少し長くなりましたので、後半は別の機会にアップしたいと思います。

自社の資金繰りに行き詰った場合や、財務状況に課題を抱えている場合には、お気軽にご相談いただければ幸いです。

また、会社の破産や債務整理、廃業等についても、ご相談をお受けしております。

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