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会社の資金繰りについて

2022-01-29

 

1月29日に、経営者の集まりである中小企業家同友会主催の勉強会が開催され、当勉強会において当事務所の弁護士池田克大が講師を務めました。

当日は、「会社の資金繰り」について、お話しさせていただきました。

弁護士池田克大は、弁護士資格のみならず認定経営革新等支援機関の資格も有しており、企業の経営改善についても業務を行っております。

そうした点から、今回、講師としてお声がけいただきました。

以下に、当日お話した内容を簡単にご紹介したいと思います。

少しでも、経営者の皆様の役に立てれば幸いです。

 

第1 資金繰りとは

1 資金繰りとは?

資金繰りとは、会社の収入と支出を管理して、手持ち資金の過不足を把握し、調整することをいいます。

ちなみに、「手持ち資金」とは、現金、普通預金、当座預金等、会社が使いたいときにいつでも自由に使えるお金を指します。

したがって、定期預金、売掛金、手形などは、通常含みません。

 

2 資金繰りがなぜ重要なのか

① 「資金」が不足すると、事業が停止する

例えば、会社の経営状態が悪い場合として、債務超過である場合や、経常利益がマイナスの場合が思い浮かぶと思いますが、これらの場合でもすぐに事業が停止することはありません。

しかし、債務超過ではなく、また経常利益がプラスであったとしても、手持ち資金が不足すると、社員の給与や取引先への支払ができなくなりますので、事業を維持することができなくなります。

 

② コロナ禍により、資金繰りが悪化する要因が飛躍的に増加

もともと、資金繰りが悪化する代表的な要因としては、以下の4点がありました。

⑴ 慢性的な営業赤字

⑵ 滞留在庫、滞留債権

⑶ 設備投資の失敗

⑷ 過剰債務

そして、コロナ禍を受けて、上記4つの悪化要因が発生する確率が飛躍的に増加しています。

この点については、後ほど詳しく紹介したいと思います。

 

③ 金融支援を受ける場合、補助金を申請する場合も、資金繰りの把握は必須

資金繰りを改善する方策として、金融機関から金融支援(融資・リスケ)を受けることが考えられますが、金融支援を受ける場合には、資金繰りの把握は必須です。

概ね、先6カ月程度の資金繰り表の提出が必要です。

また、資金繰りを補うために補助金を活用することがありますが、補助金を得ることができるのは投資をした後になります。

つまり、自己資金(あるいは融資で得た資金)で設備を購入する等の投資を行った後に最終審査がなされ、その後数カ月経ってようやく補助金が入金されます。

したがって、設備を購入してから補助金が入金されるまでの間の資金繰りの把握は重要です。

また、補助金は投資額の一部を補助するにすぎませんので、設備投資をする際は、資金繰り計画を含む投資計画を作ることが重要です。

 

④ 経営者の心の安定に資する

当事務所は、企業の倒産事件を多く扱っていますので、資金繰りに悪化した企業からの相談を受けることがしばしばあります。

こうした相談に来られる経営者に多いのは、思考がまとまらない・落ち着きがないということです。

特に、自社の資金繰りが把握できていないけれども、とにかく資金が不足して困っているというケースです。

こういった場合には、まずは資金繰り表を作成して、自社の資金繰りを見える化することが重要です。

見える化することで、いつ、いくら資金ショートするのか、この先、どのような入金があり、どのような支払があるのかを整理することができます。

そうすると、後は対策を考えればよいだけなので、漠然とした不安が解消されます。

つまり、資金繰りを把握することは、経営者の心の安定にもつながります。

 

3 黒字でも安心してはいけない

先程も、紹介しましたが、仮に経常利益がプラスであったとしても、手持ち資金が不足すると、事業を維持することができなくなります。

このように、売上が伸びているのに、利益が伸びているのに、気が付くと資金が不足していて冷や汗をかくということはよくある話です。

利益と資金がズレる要因は、いくつかありますが、ひとまずは、ズレることを知っておけばよいと思います。

したがって、毎月の経営会議では、売上や利益だけを見るのではなく、資金繰り実績を確認し、今後の資金繰りの見込みについても共有しておくことが肝要です。

経営者であれば、売上や利益については特に意識せずとも日々確認すると思いますが、資金の流れについては疎かになりがちです。

資金繰りの悪化は、目に見えない病魔のようなもので、知らず知らずのうちに会社という身体を蝕み、気が付いたときには手術をしなければない状態にしてしまうものです。

皆様の会社ではそうならないように、常日頃から確認するようにしていただきたいと思います。

 

第2 業種による資金繰りの違い

1 はじめに

資金繰りにおいて注意すべきポイントは、業種によって様々です。

そこで、資金繰りを考える上で重要な概念である「運転資本」に着目しながら、業種による違いをご紹介したいと思います。

なお、運転資本とは、厳密に言えば、「売上債権+棚卸資産-仕入債務=運転資本」とされています。

ただ、ここではより簡単に、仕入れ(売上原価に相当するもの)の代金支払時から、売上の入金時期までに必要な資金と理解していただければ結構です。

 

2 飲食業・小売業

⑴ 資金の流れ

まず、飲食業や小売業の資金の流れについてみると、大まかには以下のようになります。

【 仕入 → 売上・入金 →→ 支払 】

つまり、入金が先に来て、その後に、仕入れの支払いが来るのです。

なお、小売業の中でも在庫の保管期間(回転期間)が長い場合は、支払が先に来ることもありますので、あくまでもイメージだと思ってください。

⑵ 特徴

以上のように、飲食業等の場合は、仕入れの代金を支払う前に、仕入れた材料で商品を販売しお客様からその場で代金を受け取ることができます。

そのため、運転資本の負担が小さいか、あるいは運転資本がゼロである点が特徴的です。

⑶ ポイント

ただ、飲食業や小売業については、不良在庫が発生しやすく、在庫が滞留することで資金繰りが悪化することが多いので、在庫管理が重要になります。

また、飲食業や小売業は他業種に比して競合が多い傾向にあり、資金繰りの観点からも、売上の安定化が重要となってきます。

 

3 建設業(サービス業も類似)

⑴ 資金の流れ

次に、建設業の資金の流れについては、以下のとおりです。

【 売上 入金 → 仕入 → 支払 → 売上 →→ 入金 】

建設業の場合は、契約時または着工時に着工金として一部入金がありますが、その後は、工事が完成するまで入金がないのが一般的です。

その間の外注費や資材購入費などは、着工金で賄いますが、それでは足りない場合がほとんどですので、自己資金で賄う必要があります。

⑵ 特徴

このように、建設業の場合には、工事が完成してようやく入金があるので、それまでは自己資金でやりくりする必要があります。

また、工事完成から入金までの支払サイトが長い場合が大きので、運転資本の負担が重い傾向にあります。

⑶ ポイント

資金繰りのポイントとしては、着工金だけでなく中間金を設ける点が挙げられます。

中間金を設けることで、工期中の外注費等の支払いに充てることができますので、運転資本の負担が格段に減少します。

また、中間金を設けない場合は特にそうですが、完成報酬金が大きくなる傾向にあるため、発注元の与信管理が重要になります。

 

4 製造業

⑴ 資金の流れ

最後に、製造業についてみていきたいと思います。

【 仕入 → 支払 → 売上 → 入金 】

製造業については、材料等を仕入れた後、その支払いを行い、その後、製品が完成し納品をし、それから1~2カ月ほど経過して代金が入金されます。

⑵ 特徴

このように、製造業については、材料等の仕入代金の支払から、代金の入金までの期間が長い傾向にあるため、運転資本の負担が重い傾向にあります。

また、製造業の着工金のように、契約時に一部代金を前払いする仕組みがないため、製造業よりもさらに運転資本の負担が重いといえます。

⑶ ポイント

そこで、製造業においては、資金繰り管理が他業種に比してより重要といえます。

ポイントとしては、在庫管理の徹底はもちろんですが、リードタイムの短縮も重要です。

現場改善を進め、仕入れた材料をいかに早く製品にし、納品するかが鍵となってきます。

また、資金繰りを改善する方策としては、発注元に原材料を支給してもらう方法などが考えられます。

なお、製造業ほどではありませんが、案件規模によっては、発注元の与信管理も重要になります。

 

5 まとめ

ここまで見てきたように、運転資本の観点だけで見ても、資金繰りの特徴やポイントは様々です。

コロナ禍で業態転換を検討する企業もあると思いますが、その際は是非、業種によって資金繰りの特徴や、資金繰り把握の重要性が異なるということを思い出していただければ幸いです。

 

少し長くなりましたので、後半は別の機会にアップしたいと思います。

自社の資金繰りに行き詰った場合や、財務状況に課題を抱えている場合には、お気軽にご相談いただければ幸いです。

また、会社の破産や債務整理、廃業等についても、ご相談をお受けしております。

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