相続法改正「義父を介護した妻に財産取得の機会が与えられます!」

今回の改正で、相続人ではない人が財産を取得できる可能性ができました。

 

例えば、改正前であれば、相続人の妻が被相続人である義父の療養看護に努めた場合でも、相続人ではないため、遺産分割協議に参加することすらできず、何の権利もありませんでした

 

自身の夫が存命中であれば、夫が妻の貢献を夫の寄与分として主張することは、場合によっては可能でしたが、夫がすでに死亡している場合には、何の権利もありませんでした。

また、事務管理や不当利得といった解釈による救済の余地はありましたが、金額の算定において困難さがあり、現実的ではありませんでした。

 

そこで、今回の民法改正で、こういった、相続人以外の者で特別の貢献をした者に対して、一定の金銭の支払請求権を認める制度が新設されました

 

⑴  請求権者

① 親族であること

まず、対象となるのは、被相続人の親族に限定されます

親族とは、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族を示します。

したがって、子の配偶者、先順位の相続人がいる場合の兄弟姉妹、被相続人の配偶者の連れ子などは請求権者に含まれます。

② 療養看護その他の労務の提供をしたこと

療養看護は文字通りですが、その他の労務の提供としては、被相続人の事業を手伝っていた場合なども含まれます。

他方、財産上の給付は含まれませんので、単に生活費の援助をしていただけという場合は、該当しません。

③ 無償であること

ここでいう「無償」とは、労務提供の対価を得ていないことを言います。

何らかの金銭を受領していた場合、住居費を支払うことなく同居していたような場合、被相続人の財産で生活をしていたような場合でも、それらが「労務提供の対価」と言えない場合には、無償であると言えます。

また、無償ではなく労務提供の対価を得ていたものの、その額が非常に少額であった場合には、直ちに無償性を否定するのではなく、実質において対価と言えるかという観点から判断されます。

④ 被相続人の財産の維持または増加に寄与したこと

単に無償で労務提供をしただけでなく、被相続人の財産の維持又は増加に寄与したこと(その結果、各相続人が相続によって取得する財産の維持又は増加があったこと)が必要です。

⑤ 特別の寄与であること

寄与分の制度にいう「特別の寄与」と同程度の貢献が必要であり、それで十分であると考えられています。具体的には、被相続人との身分関係において通常期待される程度の貢献を超える貢献が必要といえます。

⑥ 除外される者

相続人、相続放棄した者、相続権を失った者は、本制度から除外されます

 

⑵ 権利行使

① 請求の相手方

相続人に対して請求することができます

相続人が数人ある場合には、相続人全員に対して請求することもできますし、特定の相続人に対して、当該相続人が負担すべき額(特別寄与料の額に当該相続人の相続分を乗じた額)を請求することもできます。

② 請求額

特別寄与者の寄与に応じた額を請求することができます。

具体的にいくらであるかについては、これからの実務の集積に委ねられますが、既にある寄与分の制度における算定基準が参考になります

③ 請求の方法

当事者間で請求することもできますが、当事者間で協議が調わない場合には、家庭裁判所に対し、協議に代わる処分を請求することができます

家庭裁判所は、申立があると、寄与の時期、方法および程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料を決定します。

④ 期間制限

家庭裁判所を通じた特別寄与料の請求には、期間制限があります。

具体的には、特別寄与者が相続の開始および相続人を知った時から6ヶ月、または、相続開始の時から1年です。

この期間が経過すると、請求することができなくなります。

なお、上記の権利行使期間は、請求の相手方となる相続人ごとに個別に決定されます。

以上、本制度の概要について簡単ですが紹介させていただきました。

 

新しい制度ですので、今後、どの程度活用されるかは未知数です。

被相続人が亡くなった後の親族関係を考えて、権利行使を控える人も多いと思います。

ただ、この制度によって、これまで、相続権がないために、生前の貢献について何らの対価も得ることができなかった人達、例えば、自分の夫の親を一人で療養看護してきた配偶者などが、少しでも報われるようになればと思います

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